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相談事例
税理士法人 あいき
 我々あいきグループは、相続手続きのお手伝いをするにおいては常に最善の努力をし、可能な限りに関係者の利益を守ることをモットーとし作業を進めております。特に、遺産分割手続きにおいては、親を亡くした悲しみの中で、兄弟姉妹の間では、100%とは行かないまでも70%の及第点を見いだしていくことができるものです。実の兄弟姉妹同士では、話し合いをしていけばいくほど、譲り合いの精神が働き何らかの妥協策が見つかるものです。これは、血を分けたもの同士の特権でしょう。この中に、本来、部外者である相続人の配偶者が口を挟んできたら、我々は、要注意と考えてます。

 先日のケース。被相続人である父は、農家で配偶者は既に他界しており、相続人は、姉(56歳)と妹(53歳)さらに妹の旦那(養子)の3人。姉は、家を継ぐことを避けサラリーマンの家に嫁ぎ、夫の転勤について引っ越しを繰り返し5年前よりやっと四国に落ち着いた状況。2人の子供も成人し借家住まいではあるが、それなりに生活はしているとのこと。一方、妹は、農家の跡継ぎとして親の決めた婿養子と結婚し、子供も手が離れ、さて、これから自分の人生の楽しみを見つけようとした矢先、母の死と父の介護に明け暮れる毎日。農家の跡継ぎの筈の婿養子は、勤めも辞めず仕事以外の時間はパチンコ通い。家賃収入が入るようにしたものの、残された生産緑地指定の農地は依然として妹が、農業従事者として畑を耕作し続けている。心の底では、なんだか割が合わない感じ。
 父の財産は、相続税対策のおかげで、マイナス財産を差し引いた結果、全体で3億6千万円。当初の話し合いでは、長女6千万円、次女2億円、婿養子1億円の目安で、落ち着きそうな話し合いでした。
 婿養子さんは、当初の申し出より、姉妹の決定に従うとのことでしたので、姉妹の話し合いを私ども税理士法人あいきが調整していく形で進めて行きました。姉からは、最初、外へ出た負い目からか「何の主張もしません」、「妹の決めたとおりで進めてください」とのことでしたから、その方向で妹さんと分割案を何度も何度も練り返しながら進めていきました。
 基本線はこうです。夫である婿養子には、跡継ぎではあるが養子のため妹の半分、姉には、何もいらないと言っても、将来愛知に戻って家を建てられるように土地一筆と農地とそれに係わる相続税相当分の現金を財産分けしようと。妹の譲り合いの気持ちの表れ。全体財産のバランスとしては、不動産と現預金のバランスが良くないため(土地の比率が高すぎる)納税資金の捻出に苦労したものの、何とか分割案として妥当なものができ上がり。姉に連絡(我々が、四国まで行って説明)したところ、承諾頂きました。

 それから3日後、後回しになっていた事務手続きを進めていたところ、姉からの電話…
 長距離電話の話の内容は、要領を得ず、ただただ狼狽されている様子。何とか仰りたいことを整理すると、この分割協議案では判を押せないとのこと。数日間、毎日のように電話するも、どうしたいのか、どれだけ財産をほしいのか要領を得ないやりとりが続く毎日。
 よくよく姉に聞いてみると、とうとう出てきました「部外者である相続人の配偶者」
 姉の話。夫が言うには、この遺産分割案は常識的に見ておかしいとのこと。
 その言い分。「養子の取り分が、姉(妻)より多いこと」「姉(妻)は、土地ばかりで、現預金が少なく。相続税を払うと何も残らない」などなどでした。
 出た出た。よく出るんです。部外者の常識の皮を被った強欲が。
 このような部外者は、たいていこのように言います。
 「妻は、悲しみの最中にあり、正確な判断ができないと。冷静に考えてみると、この分割案は、常識的におかしい」と。この、姉の旦那もこのようなことを、申されていました。

 部外者である相続人の配偶者、要注意です。
 残念なことに、この部外者は、まったく悪気がないのです。自分が意見を述べ、アドバイスすることが如何なる影響を及ぼすかが、解っていません。経験のないことで仕方がありませんが…。自分のアドバイスが、姉妹の譲り合いの協調話を壊す原因となったとの自覚がないから、悪いことをしたという意識はゼロ。だからこそタチが悪いのです。
 たいていの部外者のでしゃばる理由は、ほぼ2つ。部外者の強欲と自己顕示欲。
 妹の夫が、自分の妻よりも財産分けが多いことが許せないケチか、妻に多くを相続させて将来、自分もその財産にあやかりたいと考えるセコイ人格。それと、普段は頼りにされていないので、ここぞとばかり存在価値をアピールしたがる自己顕示欲のかたまり。
 いずれにしろ、このての部外者は、良い悪いに関係なく口を挟みます。難癖をつけるだけで、代替案は出しません。出せません。もし、その部外者の主張(彼の常識)を通すとすれば、長女が実家に戻り農業と不動産賃貸業を引き継ぎ、先祖代々の墓守をして行かざる得ないことになります。そこまで考えが及びません。ただ難癖を強欲と自己顕示欲に従い発言しているだけ。口だけ挟みます。
 かような部外者がいる場合、疲れ切った相続人は、「部外者との縁が切れるなら」と親族間の交流を断ち切って仕舞うことになります。あ〜〜〜寂しい。

 後日談。この遺産分割は何とか、姉6千万円、妹2億円、婿養子1億円で落ち着きました。当初の案どおり。我々が、部外者への説明をさせて頂きました。口を挟むだけの部外者は、悪びることもなく、「妻が、納得できるならそれでいいんです」と。
 ことの重大性がいまだに、わかってません。
 こんな輩が、あなたの身内にも親戚の皮を被って潜んでいます。要注意です。

公認会計士 松田 茂樹